こんにちは。今回は「日本の伝統工芸を知る」シリーズ【青森編その1】です。
本州の最北端に位置し、白神山地や八甲田連峰等の山々、陸奥湾を抱き込みむ自然に恵まれた青森県。大きく分けると「下北地方」「南部地方」「津軽地方」の3つがあります。その全てが日本海、太平洋そして津軽海峡の3つの海に接していることが最大の特徴といえます。食文化はもちろんのこと、各地方で多様な伝統工芸が育まれてきました。
その中でも伝統をしっかりと残しつつ、おしゃれに、今もなおモダンに進化し続けている
- 津軽塗
- 津軽びいどろ
- あけび蔓細工
- こぎん刺し
- 南部裂き織り
などについて3弾にわけてお伝えしていきたいと思います。
是非お楽しみください!
津軽塗とは
「津軽塗」は一般的には津軽地方で生産される伝統漆器の総称とされています。「津軽塗」という言葉が生まれたのは明治六年(1873年)、ウィーン万国博覧会に漆器を展示する際に産地を明らかにするため名付けられたことが始まりと言われています。津軽地方における漆器産業としての伝統はさらに古く、江戸時代中期にまでさかのぼることができます。「津軽塗」の特徴は、堅牢で実用性に富んでいると同時に、非常に優美な外見を持つ、というところにあります。「津軽塗」で用いられる「研ぎ出し変わり塗り」という技法は、幾重にも塗り重ねた漆を平滑に研ぎ出して模様を表す方法です。この繰り返しに数十回の工程、二か月以上の日数を費やすことで、複雑で美しい漆模様と、頑丈でしっかりした触感が得られるのです。 青森県漆器協同組合連合会 HPより
藩政時代には様々な塗の技法が存在しましたが、現代まで伝わっているのは「唐塗」 ・「七々子塗 」・「紋紗塗」・「錦塗」の四技法です。
「津軽塗」の代表であり、最も多く生産されているのが「唐塗」です。唐塗独特の複雑な斑点模様は、何度も塗っては乾かし、そして研ぐという作業を繰り返し、 全部で四十八の工程から生み出さレます。完成までには最低でも一ヶ月半~二ヶ月を要するのだそう。
「七々子塗」は研ぎ出し変わり塗りの技法の一種で、模様をつけるために菜の花の種を蒔き付けることで輪模様をつけることが特徴です。魚の卵に似ていることから「ななこ」という名称つけられたそうです。
「錦塗」はななこ塗の変化の一種で、ななこ地に黒漆で桜を唐草風にデザインした唐草や、 菱形・稲妻型の紗綾形を描き錫粉を蒔いて錦を想わせるような華やかな技法です。非常に手間がかかり、さらに高度な技術を要するため、現在、錦塗を塗り上げれる津軽塗職人はごくわずかしかいないといいます。
黒漆の模様(多くは線描を主にした総模様)に紗(津軽地方ではもみ殻のことを紗と呼ぶ)の炭粉を蒔き、 研ぎ出して磨き仕上げされたものを「紋紗塗」と呼びます。現在では一般製品としてはあまり見られなくなっています。
4技法の詳しい製作工程はこちらです。
EBISUYA津軽塗
今回主にご紹介させていただく商品は青森市にて創業60年以上の津軽塗販売店「恵比須屋」さんです。
青森の伝統工芸品「津軽塗」は、普段よく使う生活道具が中心です。使いやすく丈夫で長持ちするように、膨大な時間と手間をかけて塗られ、根気よく仕上げられています。選んだ持ち主の個性と共鳴するのは、手作りで同じものはないという、職人のこだわりが生んだ独特の存在感。あなたと暮らす津軽塗を見つけませんか。
EBISUYA HPより
トップ画像の津軽塗のリンゴがとっても美しく、可愛らしいです。青森の特産品であるリンゴと伝統工芸である津軽塗が合体しているところも魅力的ですよね。
実家にも母が還暦祝いに貰った津軽塗のリンゴの小物入れがあるのですが、インテリアとしても素敵である上に、中に物を入れられるのでチョコレートを常備して客間に置いています。
漆器
津軽塗といえば漆器ですよね。唐塗のイメージカラーは赤色でしたが、こんなにもカラフルな色が揃えられていました!並べるととっても可憐で美しいです。唐模様の映える色合いと漆ならではの艶が素敵です。
斑点模様を縁取るゴールドと赤がリッチな雰囲気を出しており、青によく映えます。内側はお椀らしく上品な赤色が塗られているのでお料理をより一層美しくしてくれます。
こちらは珍しい紋紗塗のお椀です。松の葉の模様と鉄器のような重厚感、輝きがとても上品です。内側も漆黒で塗られているところがなんともおしゃれで美しく纏まっています。光の加減によっては写真のような美しい色合いを目にすることができます。
お箸
続いてはお箸です。実は私の父が津軽塗の大ファンで実家のお箸は全部津軽塗です!唐塗で赤、緑、黒があったように思います。父は子供のお弁当用のお箸まで津軽塗にする徹底ぶりでしたので、みんながキャラクターの可愛いお箸を使っている中で津軽塗のお箸を使うのは当時はちょっと恥ずかしい時もありました(笑)今思えばとても贅沢なことですよね。大人になっても長く使えますし、小さい頃から伝統工芸に触れることができたのはとてもありがたいことなのでした!
こちらは紋紗塗のお箸。女性用に華奢に作られています。優美なパステルカラーと墨を流したような掠れた仕掛けがとっても素敵です。ちょっとアンティークのような雰囲気がありますよね。
ななこ塗はいろいろな色が揃えられているのでお気に入りの色を探してみてくださいね!
キャニスター
以前、「九谷焼」のキャニスターを紹介したことがあります(記事はこちら)が、伝統工芸×異素材×身近な雑貨という組み合わせってとても素敵ですよね!完全に私のツボです(笑)
この美しい佇まいたるや….!梅干しや佃煮、ナッツや甘納豆…。何を入れようか悩んでしまいます。
渋い唐塗。ガラスと組み合わせることで「抜け感」が生まれ、その対比がおもしろいですよね。
こちらは陶器と津軽塗が組み合わされたキャニスター。おしゃれすぎます!!!ヨーロピアンな雰囲気を持ち優しい風合いでほっこりとした陶器に、津軽塗の蓋が見事に調和しています。
紅茶やコーヒーを入れたり小物入れとしても使えます。出しておいてもインテリアとして眺めることができちゃうのでとっても優秀です。
名刺入れ
唐塗に呂上螺鈿が散りばめられた名刺入れ。伝統工芸がスマートな形の名刺入れになるとは…おしゃれですね。まるで天然石のような宝石のような、なんと表現したら良いのかわかりませんが、漆ならではの輝きが四角い箱型になると漆器とはまた違った表情を見せてくれます。
上品です…! バッグの中に入っているだけで宝物を入れている気分になりそうです。さらに伝統をプラスして「名刺香」でお気に入りの香りを移してみてはいかがでしょうか!(詳しくは「火をつけないお香」の記事をご参照ください)
螺鈿が黒漆によく映えており、とても美しいです。
アクセサリー
津軽塗のアクセサリー。アクセサリーもまた漆器とは違った表情を見せてくれます。形や色によってこんなにも雰囲気が変わるとは…津軽塗の魅力はどこまでも広がりますね。写真のバングルも大人っぽい雰囲気がとっても素敵で、どんな服装も引き立ててくれそうです。どこかエスニックのような異国感を感じさせます。
ピアスたち。可愛すぎます….!!幾何学的な形と津軽塗の組み合わせがとってもおしゃれ。
主張しすぎず、そっと彩りを添えてくれています。
バイカラー風に木と唐塗に塗り分けられたピアス。個性的でかつ洗練されています。おしゃれ!!!ピアスを引き立てるべくファッションをシンプルにしたいですね。
こちらは螺鈿を贅沢に使ったピアス。紗紋塗の肌感ととてもマッチしていてまるでイルミネーションのようにロマンチックな輝きを放っています。
「まとふ(matohu)」というファッションブランドのピアス。7角形に渋目のアースカラーの唐塗、ゴールドの三角が美しく融合しており、エスニックな雰囲気がとってもおしゃれです。普段着にはもちろんのこと、ドレスアップした姿にも合いそう。
下駄
台の部分に津軽塗、鼻緒には青森の伝統工芸である「こぎん刺し」をあしらった青森づくしの下駄。とっても華やかでワクワクします。こぎん刺しの鼻緒はこの後ご紹介する「夏次郎商店」のものを使用しています。左右非対称な柄が遊び心があって可愛らしいですね。
漆の上品な赤色にモノクロのこぎん刺しがよく映えます。浴衣を着たくなります。おしゃれは足元からと言うように、下駄から浴衣を選んでもいいですよね!
男性用の下駄もとってもおしゃれでかっこいいです。履かないときは飾っておきたくなりますね(笑)
夏次郎商店
「こぎん刺し」の鼻緒を中心に雑貨を製作、販売している「夏次郎商店」。Creema にてショップを開かれていますのでぜひチェックしてみてくださいね!(こぎん刺しについてまとめた記事はこちら)
津軽塗のバイカラーになっている下駄。赤いし刺繍がアクセントになっていてとってもおしゃれ。普段着にも履きたくなっちゃいますね。
ちょっと渋目の津軽塗がとってもおしゃれ。青森の伝統工芸である「津軽桐下駄」とのコラボレーション。
カラフルなこぎん刺しの鼻緒。ポップな色使いが可愛らしいです。
nanako(七々子)
ななこ塗に特化したブランド「nanako」。青森県を代表する特産品・工芸品、津軽塗のメーカー である「小林漆器」によってお創設されています。
ちょっとずつ形の違う小さな「○」がたくさん集まっただけの、ごくごくシンプルな図案。きっとどこかで目にしたことのある、日本人には馴染み深いこの模様こそが、青森県弘前市の特産品「津軽塗」を代表する模様、「七々子塗」です。
nanako HPより
菜種で生み出された◯の形がまるで手書きで描かれたかのような可愛らしさを演出してくれています。
漆器
優しい色合いが可愛らしいです。漆器のツヤ感がお椀の丸みをよりぷっくりと見せてくれています。
元気にさせてくれる色合い。食が進みそうです(笑)HPにて◯模様と下地の色の組み合わせをシミュレーションできるのでぜひ試してみてくださいね!
紙コップホルダー。なるほど!と感服させられるアイデア商品。パーティなどにもぴったりですね。
タイル
小林漆器より販売されているタイル。モダンで素敵です。お部屋の壁掛けにしてもいいですよね。お部屋の雰囲気を引き締めてくれそうです。
様々な柄の津軽塗タイル。シックなものからポップなものまで。アニマル柄もありますね!どれも素敵です。お部屋の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか?
番外編
最後に津軽塗を取り入れたものをご紹介したいと思います!
マスキングテープ
なんと!津軽塗のマスキングテープがあるんです!!
お色は4つ、唐塗とななこ塗の二つがあるようです。ノートの背表紙に貼ったり、しおりを作ったり…使い方はアイデア次第で無限大です。貼るだけで伝統的な模様を楽しむことができるなんて素敵です。
ネイル
続いては唐塗のネイルです!!「塗る」と言う作業が唐塗とネイルで掛かっているのが胸キュンです(笑)
カラフルな唐塗ネイル。再現具合がすごいです。お祭りやイベントなどにぴったりですね!
こちらは緑と赤ベースで上品にまとめられた華やかなフットネイル。津軽塗の下駄を履けば完璧ですね(笑)エスニックな雰囲気が夏にぴったりです。
ちょっと技術が入りそうですが、自分でチャレンジしてみてもいいですし、あるいはサロンで注文してみてもいいですね!
最後に
いかがだったでしょうか?
伝統的で格式高いイメージのあった津軽塗ですが、より身近に感じることができたと思います!
それにしても、どれも素敵でしたよね。全部欲しいです….。
ずっと眺めていたくなるような美しさ。
身近なところに芸術品があるなんて、幸せですよね。
私も暮らしの中に伝統工芸を取り入れることで、気分を上げていきたいなと思います。
次回の「こぎん刺し特集」もお楽しみに。
それではまた。
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