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白岩焼の美しい青の世界。日本伝統工芸を知る【秋田県編その2】

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日本伝統文化

こんにちは。「日本伝統工芸を知る」シリーズ、秋田県編です!

本州北部の産地にあり、日本海に面した秋田県は「能代・白神」「鹿角・大舘・北秋田」「秋田・男鹿」「田沢湖・角舘・大曲」「由利本荘・鳥海山」「横手・湯沢」の6つのエリアに分けられ、白神山地を始め温泉にも恵まれた自然豊かな地形が様々な伝統工芸を育んでいます。

美しい自然の中で生み出されてきた秋田の伝統工芸。その中でも前回の【秋田県編その1】に引き続き

  • 大舘曲げわっぱ・杉桶樽
  • 白岩焼
  • 銀線細工
  • 樺細工

についてご紹介していきたいと思います。

第二弾「白岩焼」が魅せる美しい陶器の世界をお楽しみください。

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白岩焼とは…

白岩焼は、秋田県仙北市角館町で焼かれる陶器です。秋田県においては最古の窯元であり、重ね掛けされた褐色の鉄釉と、青みの強い藁灰釉(海鼠釉:なまこゆう)の対比に特徴があります。また、白岩焼は製品が多種多様であり、秋田藩主や角舘城主の注文による献上品、庶民の生活用品、特産品であった濁酒(どぶろく)の保存容器やカメなど多岐に渡ります。

歴史

白岩焼の陶祖は江戸時代の陸奥藩の浪人「松本運七」です。鉱山における陶製ルツボ制作の技術者であった運七は秋田藩の城が構えてあった角舘の東、白岩に良質の陶土を発見したことから、1771年に秋田藩初の窯元として開窯しました。

運七の元には4人の弟子が集まり、地場産業として庇護し、技術の流出を防ぎたいという秋田藩の意向により「陶技については親子の間でさえ他言無用」という掟を交わした上での弟子入りでした。一番弟子であった儀三郎はのちに京都に上り、上絵、楽焼などの技術を持ち帰り、白岩焼発展の基礎を作りました。

需要の拡大とともに、最盛期には6つの窯に5千人もの働き手を抱える一大窯業地となった白岩。窯の集まる山の斜面地域は「白岩瀬戸山」と呼ばれました。角舘城主への献上品や庶民の生活用品に至るまで幅広く生産していた窯元ですが、その作品には陶工の個人名を示す刻印が施されたものがあったことから、江戸期には珍しい個人作家としての自負が見られます。

そのようにして繁栄を極めた白岩焼ですが、幕末から明治に至る時代の動乱と廃藩置県により藩の庇護を失ったことにより、衰退期を迎えます。廃窯が続く中、明治29年真昼山自身により全ての窯が壊滅状態になり、明治33年には全ての窯の火が消えてしましました。

白岩焼の復興の機運がおとずれたのは、約70年後の昭和時代に入ってからです。復興第一号として築窯を達成したのは、江戸時代の窯元の1人、渡邉勘左衛門の末裔であった渡邉すなお氏です。彼女は白岩焼と同じく角舘の伝統工芸である樺細工の県産品を訪ねて民芸運動の提唱を行っていた柳宗悦氏と人間国宝の浜田庄司氏による助言により昭和50年に「和兵衛窯」を築窯しました。平成五年にはすなお氏の夫である敏明氏による四室の登窯が完成し、再び登窯の煙を立ち上らせることとなりました。

参考サイト:「和兵衛窯 HPより」

和兵衛窯

1974年、江戸期の白岩焼の調査に秋田に訪れた故・浜田庄司氏をして「白岩焼の特徴であるナマコの釉薬は、現在各地で似たものが使われているが、白岩焼がいちばん良い」(昭和49年7月6日付『秋田魁新聞』)と言わしめた海鼠釉の美しい発色を求めて、三十有余年の研究を重ねてまいりました。この青白い釉薬の色は、顔料によるものではなく、土の鉄分と釉薬の灰が窯の中で科学変化を起こすことで現れます。そしてそれは、この土地の原料でしか現れない釉色でもあります。

 いくつもの釉薬の使い分けが必要であり、温度がわずかに高ければ色が濁り、わずかに低ければ艶がなくなってしまう、適温の範囲が非常に狭い海鼠釉はとても気難しい存在です。 そのような釉薬を灯油窯、登り窯といった焼き上がりの安定しない窯で焼くことはリスクの高いことではありますが、そうでしか得られない発色があると、今日まで制作を続けてまいりました。

 個性の強い釉薬を受け止め、かつ、現代の生活に合うかたち、その答えを求めて和食器から洋食器まで和兵衛窯作品の種類は増え、そして作るたびに改良を重ねております。

和兵衛窯 HP より

  

渡邊敏明さんの作品

「和兵衛窯」を築窯した渡邊すなお氏の旦那様であり、白岩焼の陶工である敏明さんの作品。海鼠釉と銅のような褐色のコントラストがとても美しく、精巧な技術の中に妖艶さや重厚感を感じることができます。

一輪挿し。釉薬が見事なコントラストを出しています。

陶器らしい艶やかな白がとても美しい。

温もりを感じる豆皿。独特の模様が素敵。

ちょっと西洋の雰囲気も感じる壺。形が優美で青と褐色の対比が形の美しさを際立たせています。

ふっくらとしたふくらみが美しいカメ。重厚感の中に温もりを感じます。

精巧なつくりの花器。海鼠釉の濃淡が美しい。ずっと鑑賞していたくなる不思議な魔力を感じます。

釉薬の垂れ具合が独特の風合いを生み出しています。

玄関に置いてあるブルーの壺がひときわ美しい。

渡邊葵さんの作品

白岩焼再興を担われた渡邊夫妻の一人娘、渡邊葵さん。彼女もまた現代に白岩焼を伝承し、発信し続ける白岩焼の職人として活躍されています。日常で使いやすいテーブルウェアからおしゃれなアクセサリーまで女性らしい繊細さ、ぬくもりを感じさせてくれる作品で溢れています。

こじんまりとした形がとっても可愛らしい器。ミルクやドレッシングなどを入れて食卓で使いたい。

ゴールドとブルーの組み合わせがとっても美しい豆皿。

しずく型のフォルムとゴールド、褐色のコントラストが素敵な花器。神聖な雰囲気も持ち合わせています。

壁にかけて使うのもおしゃれです。お月様みたいですね。

浅めのカップ。持ち手がついていてとっても可愛らしい。スープが飲みたくなります。

吉祥寺にお店を構え、日本各地の伝統工芸雑貨を販売する素敵なセレクトショップ「MARUKUS」でも渡邊葵さんの作品を取り扱っています。MARUKUSで販売するために何ヶ月もの月日を重ねてお店が志す雰囲気と合致する白川焼が生み出されたそうです。

使いやすいサイズのお皿が取り揃えられています。欲しい….!!

まるで宝石を集めたような美しさ。青色の出方次第で雰囲気が変わりますね。

秋田の田んぼの風景によく似合います。

飲み物により深みのある味わいを出してくれそうな優しさを感じます。

ゴールドの水玉模様が可愛らしく、白岩焼独特の青がしっかりと感じられるブローチ。

濃淡が美しいブルーとゴールドのバイカラーになっているピアス。思わず一目惚れしちゃうかわいさ。

三日月とひょうたんの形が可愛らしい箸置き。一つ一つ異なるからそれにしようか悩んでしまいます。

陶器独特の風合いがおしゃれなネックレス。シンプルなシャツやワンピースにぴったり。

食べ物を引き立てるテーブルウェアとしての優秀さ。

和兵衛窯のブログ、フェイスブックには白岩焼の作品を使った贅沢な食事、テーブルコーディネートが沢山載っています。献立の参考になるくらい美味しそうな料理ばかりで、器はもちろんのこと料理も必見です1

ビビンバ。平皿に盛って贅沢に。お味噌汁の容器もなるほど、カップにするのも素敵ですね。干し柿をデザートに。

夏らしい食卓。ブルーのお皿が涼しげに夏を演出。夏野菜が青によく映えます。

月の満ち欠けのようなデザインが素敵。桜色の和菓子を引き立てています。

お抹茶と一緒に。器が変わればお茶の時間も一気に贅沢な時間になります。

お二人の作品は今回ご紹介したもの以外にも沢山ありますので、ぜひ

和兵衛窯 HP」からオンラインショップ、ブログやインスタグラムなど、チェックしてみてくださいね!

終わりに

いかがだったでしょうか。

一度は途絶えてしまった白岩焼の伝統を復興させ、新たに再構築された渡邊さんの作品はどれも美しく、心癒されるものでしたね。

特に白岩の地から取れる海鼠釉が生み出す独特の青白さは青空のような、深海のような、見る人によって異なる表情を見せてくれる深みのある神秘的な色ですよね。

なおかつ、私たちの暮らしにそっと寄り添ってくれる優しさも感じます。

いつか渡邊さんの展覧会に行ったり、作品を暮らしに取り入れたいと思いました。

実は私の祖父は白岩焼のカップソーサーを長年大切にしており、コーヒーかホットミルクを飲むときはいつも使っていたことを思い出しました。小さいながらいい器だなあと思っていました(笑)それくらい、素敵な器って長く印象に残りますよね。

次回の【秋田県編その3】もお楽しみに。

それではまた。

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